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理念の中の二つの目的

今から30余年前に、安心安全な蕎麦、料理を落ち着いた文化の漂う空間で、お客様に楽しんで頂きたいと考えていました。
人は生まれた土地で一生を親子共々送れれば、こんなに喜ばしいこ
とはありません。
しかし、現実問題、地方には学校も職場も限られています。故に、若者は地方から東京の大学へ、
やがて就職、結婚をして家庭を築きます。東京は人口が集中してしまい、住宅事情が追いつけませんでした。
そこで問題を解決するために、大規模な多摩ニュータウンが武蔵野の丘陵にできました。
地方出身の多くの方々が移り住むエリアの中で、伝統食の蕎麦店を通じ何がお役に立てるか思案しました。

田舎で暮らしているお父さんやお母さん、おじいちゃんやおばあちゃんと、都会暮らしの息子さん、お孫さんたちの思いを結んであげたい。「おふくろや親父どうしてるかな・・・」
蕎麦が出てくる間に、そんな思いに駆られる空間をつくりたい。
そうだ、田舎の民家を移築再生しようと思いました。
親が子を思う心、子が親を思う心遣いに少しでもお役に立てたらこんな嬉しいことはないと感じ、その思いがどんどん膨らんでゆきました。そうすれば誇れる車家になれるのではないかと思いました。

人が家を造り、家が人を育てる

大工さんたちが家を造る、その家を丁寧に拭き掃除して、
野の花を生ける、きれいな穏やかな家には穏やかな人が育つ、
そう、言い伝えられている好きな言葉です。

大事に住んで孫子に伝えたい100年、200年と、昔はみんなそう思いながら、先祖が苗木を植えて、3代後には柱がとれる立派な木に成長して、そのときの当主が末代までの繁栄を願い、手造りの在来工法で建てたのが民家です。

会津、只見の目黒家もまさにその言葉にふさわしい御家族でした。物置の陽だまりでアケビ細工を編んでいる八十半ばを過ぎた宇太次さんのお顔はどこまでも優しく穏やかでした。

「家を頂いてゆきますが、おじいちゃんの人柄も頂いてゆきます」と声をかけたことが思い浮かびます。
年を重ねたらこうなりたい、としみじみ思いました。
まさに、”小さな田舎をつくる”思いの中心に据えるに
ふさわしい民家との出会いでした。昭和58年、その年は何時にない大雪でした。

家作り手伝帳

この手傳帳は明治7年から8年に掛けての家作りの物語を感じます。
本来は雪深い只見地方に伝わる、結(ゆい)と呼ばれる労働の助け合い・貸し借りの
覚書ですが、読み解くほどに豪雪地只見に生きる人々の逞しさ、優しさ、暖かい人間関係が
感じられます。

目黒家の方、携わった多くの方々の想いが詰まった曲がり家を次の世代へと
引き継げて行けたらと思っています。

逆さ柱の話

目黒家住宅の客間の右窓の柱は逆さです。
根を下に生えている木をその逆にして柱として使用する見立て違いは、棟梁の最も恥です。
あえて、何故そうしているのでしょうか?
この地方では江戸時代、儒学、老子の”足るを知る”(身の程をわきまえて、むやみに不満を持たない)、
満ちる一歩手前で十分満足しなさいと云う、子々孫々まで家系が続く教えがうかがえます

いつの世も、満ち足りた状態を保ち続けるのは大変なことです。ご先祖のお気持ちが宿っている一本の柱です。

車家店舗を計画中に師匠よりこんな話をお聞きしました。
良いものを作りなさい。ある基準以上のものを作りますと物に命が宿ります。物が勝手に生き続けるのです。法隆寺のような文化財が良い例です。寺のものであり、奈良県の文化財であり、日本の重要文化財、世界遺産、世界の宝です。
良い絵画、彫刻、音楽のように大事に受け継がれ多くの人に楽しみを与えてくれます。

目黒家住宅にもそのような性格がありまして、現在、車家になりました。
本来ならダム下に沈むか、焼却されたと思いますが、本物の会津地方の民家であったことと、130年ご先祖の思いを引き継ぎ大事に手入れされてきた思い、燃やすにはしのび難い思い、誰かが必ず再生して使ってくれることを信じて何年も待っていて下さった事が、車家との出会いに結びつきました。

この建物は、目黒様をはじめ、再生に携わった方々の作品でもあります。
もっと前の家作り手伝帳に記された140余年前の人たちの思いをも感じます。
そういった思いを引き継いで次の世代に送ることが大事と考えております。おのずと目黒家住宅は預かり物と感じます。電気の無かったその昔、見えております大きな梁、栗の大黒柱、当時全て鋸と手鉋で仕上げております。
店はお客様の為に作りました。多くのお客様がこの思いを感じて頂き楽しんで頂ければ何よりの喜びでございます。

営業日カレンダー

営業時間
11:00 ~ 15:00 (Lo.14:30)
17:00 ~ 20:30(Lo.20:00)
定休日
毎水曜日・第三木曜日
毎週火曜日は半休(15時閉店)
※尚、祝祭日の場合は通常営業致します。
(20時半閉店)

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